ヴォドニーク [Vodník] とは、チェコ語で「水の」くらいの意味だが、ここではチェコの民話に登場する、湖に住む妖怪を指す。
「ヴォドニーク」はチェコの民族詩の一つであり、人々の水に対する恐怖心にリンクしている。本作品は、カレル・ヤロミール・エルベン[Karel Jaromír Erben, 1811 - 1870] の童話に拠っている。
エルベンは詩人で、チェコのバラードや民族詩の収集家。チェコの最も広く読まれている詩集の一つである「花束」[Kytice] を著した。
エルベンの「ヴォドニーク」は、緑色の髪、服からは水を滴らせ、月明かりの下、ブーツを縫い、自分に歌を歌っている。
フィビヒは4作目のコンサートメロドラマとして、1883年に管弦楽版を書き上げると、直ちにピアノ版も書き上げた。
初演は管弦楽版、ピアノ版の順に行われたが、楽譜が出版されたのはピアノ版のみ。初演は何れも作曲者自身の手で行われている。
このメロドラマは4部構成になっており、各部は明確に分かれている。
ヴォドニークの独白の後、母娘の会話が始まる。湖に行こうとする娘を、母が必死に止め、家にいるよう説得する。
しかし娘は魔法の不思議な力で湖の岸に惹き寄せられ、湖に沈んでいく。崖の傍のポプラの木の上では、ヴォドニークが手を叩いて喜んでいた。
湖の底で娘は、ヴォドニークの幼き妻にされ、二人の間には赤ん坊も生まれた。しかし娘は地上の墓で眠りたかった。
ある時娘とヴォドニークは喧嘩になった。娘はそれまで何度も何度も頼んだのに、ほんの少しも母と会う時間を与えてくれないことを詰った。
家を離れた娘が二度と帰ってこないのではないかと危ぶんでいるヴォドニークは、娘に約束させる。「誰をもその手に抱くな、晩の鐘が鳴るまでには帰ってこい、赤ん坊は置いていけ」と。
娘は母の許を訪ね、母娘は幸福な一日を過ごした。母は娘に、再びヴォドニークの手には渡さないと言って聞かせる。しかし夜になると、怒れるヴォドニークがやってきた。「ドン!ドン!」とドアを叩き、家に戻れと怒鳴る。それには母が応酬する。
この応酬は翌朝の日の出までに三度続き、最後にヴォドニークは赤ん坊が泣いているぞと言う。赤ん坊のことが気になる娘は、ヴォドニークの家に行きたがる。母は娘を必死に引き留め、ヴォドニークには、赤ん坊がそんなに泣くのならここへ連れてこいと怒鳴る。
湖に雷鳴が轟き、子供の叫び声が響く。そしてドアの隙間から血が流れ出してきた。母が外の様子を確かめようとドアを開けると、そこには首と胴がバラバラにされた赤ん坊の死体が転がっていた・・・